ちくわの穴

人間は考えるちくわである。3児の父親。仕事・子育てなどで学んだことをアウトプットしてます。

感情回転寿司

人々が感情を表現し、共有するために集まる感情の回転寿司屋、"Emo-Sushi"がオープンした。
感情が色と形になって寿司のように提供される。
ここでは、客たちは感情を選び、楽しむことができる。

店内は明るく、カラフルな装飾が施されている。
テーブルには感情メニューが置かれ、さまざまな感情がリストアップされている。

寿司ベルトコンベアの上には、感情を象徴するカラフルな寿司が並ぶ。
例えば、"ハッピー・ホルモンロール"、"メランコリーマキ"、"ワクワクニギリ"・・・。

ある、若い夫婦が来店する。
席についた若妻は早速、
「私はこれにするわ。綺麗だもの」
そう言って、皿にのった、色鮮やかなゼリーのようなプルプルの乗った軍艦巻きを手に取った。

醤油を垂らし、その軍艦巻きを口へ運ぶ。
若妻は、その目を見開いて、2ヶ月前に夫となった男を見た。

「あなた、顔を洗う時、どうしてあんなに洗面所がべちょべちょなの?
あなた、靴下を洗濯物に入れる時にどうして、くるくるしたままなの?
どうして、マヨネーズを使った後、汚いまま蓋をするの?
・・・・」

その後も小言が、どんどん出てくる。

若妻は、この2ヶ月、我慢していて、いつ伝えようか思い悩んでいたことばかりだった。
口から出る小言を止めることはできなかった。

若妻の目からは、涙どんどん溢れてくる。

顔を赤くした若夫が皿のラベルを見ると
「小言のきらめき 〜無数にある星のように〜」
と書かれている。

小言の止まらない若妻に困った若夫は机上に
「感情をすいましょうが」
と書かれた、トングのようなものを見つけた。
「・・・どうして靴をそろえないの。
トイレは、座ってして・・・」
と、美しい妻の口から出てくる小言を聞きながらトングを持ち上げる。

すると、妻の周りに淡い光のようなものが見える。

それを、トングでつまんでみると、その光が、つるりと妻からはがれた。

すると、黒い帽子を被った店員が、空の軍艦巻きをお皿にのせてたっていた。
若夫は、その軍艦に光をのせると、元あった輝く軍艦へと変身した。

若妻は、何事もなかったようにこっちを見ている。
そして、
「スッキリした味だったわ。一瞬、記憶が飛んだような気がするくらい、不思議な味。あなたもどう?」
と言い、目をぱちくりさせた。

若夫は、急いで会計を済ませて店を出た。


「この寿司の効果は、30秒。あの若妻、私が、トングの演出をしなければ、後何分、小言を言うつもりだったのだろう」
と、店長が、こそっと呟いた。