ちくわの穴

人間は考えるちくわである。3児の父親。仕事・子育てなどで学んだことをアウトプットしてます。

ショートショート 時間なっとう

ある研究者が、時間かき混ぜ棒を発明した。
彼は言う。
「この時間かき混ぜ棒で、時間をかき混ぜて現在と過去と未来をごちゃ混ぜにしよう。そうすれば、嫌な過去も、最悪の未来も我が手で自由になるであろう」
研究者は、金色に輝く時間かき混ぜ棒をクルクルと回した。
研究者は忘れていた。
時間は、過去と現在、未来とつながっていることを。
そして、彼の歩んできた過去は、実は無数にあり、未来も無数にあることを。
彼の歩んできた過去は、無数にある過去の一つにすぎないことを。
彼はかき混ぜてしまった。
引っ張られた過去と、未来は、綿菓子のようにかき混ぜ棒の周りに雲のように集まってきた。
彼は、そんなことにも気が付かずかき混ぜ続けた。
クルクルくると、過去、現在、未来がかき混ざり、粘り気を帯びてくる。
彼は、時間の糸の中に取り込まれていった。
まるで納豆のように。
その納豆は、ある神の朝食となるのだった。


参考
時間は存在しない